日本の庭園
心に残る風景と庭づくり(島根県大芦の洗濯岩海岸)
. 島根県松江市島根町大芦にある須々海海岸の洗濯岩をご紹介したいと思います。
私は、島根県の出身で、夏になるとよく、この近くで海水浴を楽しみました。海水浴の帰り道に眺めたこの景色は、東京で造園業を営んでいる今でも時折思い出されます。
堆積岩が浸食されてできた洗濯岩の曲線と遠くの岩島との空間がとても美しいと思います。
庭を造るときにも、このような美しい景色を参考にすることがあります。
自然に洗い出された曲線の美しさや海に消えてまた現れる感覚、波に削られた岩の気勢や空間は人を引きつける魅力を持っていると思います。
庭を造っていると、これはきまったとかこれは不自然だとかこれは力強いとか貧弱だとかいう会話をよくします。自然の美しい景色を観察していると、庭づくりのヒントがたくさん隠れているなと思います。
日本最古の作庭秘伝書「作庭記」には次の様に書かれています。
或人のいはく、人のたてたる石は、生得の山水にはまさるへからず。但おほくの国々を見侍しに、所ひとつにあはれおもしろきものかなと、おほゆる事あ れど、やがてそのほとりに、さうたいもなき事そのかずありき。人のたつるには、かのおもしろき所々ばかりを、ここかしこにまなびたてて、かたはらにそのこ となき石、とりおく事はなきなり。
この記述の、「人のたつるには」を、「人が庭を造る時には」と解釈すると、「人が庭を造るときには、自然の景の優れた部分をあちこちに学び立てなさい。」「つまらない景を取り入れる必要はない。」ととれる。
私なりに解釈すると、単に自然を模写するのではなく、自然の景から学びとれる優れたエッセンスを生かして庭を造りなさい。ということではないかと思っている。
今後もたくさんの美しい景色や、庭を見て学び、庭づくりに生かしていきたいと思います。